病院長挨拶 GREETING
近畿大学奈良病院は1999年10月に生駒市の広大な緑豊かな丘陵地に開設しました。奈良県西和地域の基幹病院として、地域住民に広く認知され、登録患者数も24万人を超えようとしています。生駒市、奈良市、生駒郡、さらに北は四條畷市、南は大和川の左岸地域からも高度医療を受けたいと受診される患者さんがおられます。
このような地域中核病院で研修を始めるみなさんは、人の尊い命と健康を守る使命のあることを常に忘れることなく、いろいろな疾病で来院される患者さんに対応することができるよう、医師としての資質を磨くとともに確かな技量を身につけることが求められます。近畿大学奈良病院には様々な専門医が勤務しており、最先端医療を実践するとともに熱心にみなさんの指導にあたります。立派な医師を育成するための援助を多数の指導医が行います。
診療科目は現在30科あります。ただし、それぞれの科が別々に独自に診療を行っているわけではありません。センター方式も活用し、救命救急センターでは三次救急の対応を多数科の医師が協力して診療します。がんセンターでは悪性腫瘍の患者に対し、個々の病状に応じて内科、外科、放射線科、緩和ケア科が相談しながら、最良の治療法で患者支援を行います。このように科どうしの垣根が低く相談しやすい環境の中で、みなさんも技術のみならず多角的でテーラーメイドな医療を学ぶことができます。円滑な連携に根ざしたチーム医療を実感できる有意義な研修が可能な環境です。
国は老齢化社会、人口の減少に向かう将来を見据え、さらなる病院の機能分化を図り、病院で完結する医療ではなく地域全体で患者を診る医療に移行しようとしています。リハビリテーションや慢性化した長期療養の必要な患者のための二次病院への転院、介護保険を利用した介護施設、特別養護老人ホーム、訪問医療、訪問介護、在宅医療などに向けた患者支援など、退院後の医療支援も包括した対応が求められています。様々な後方医療の選択肢の中から、当院入院中に患者の病状に即した決定を行う退院支援も習得する必要があります。医師に加え看護師、ソーシャルワーカーが構成する患者支援センターがその役割を担います。地域医療の実態を知るために、近隣の診療所や郡山保健所での実習も研修プログラムに含まれています。
初期研修医は知識が豊富にあっても経験値はなく、これから実践力を身につけるのですから、医療現場では常に積極的に取り組んで下さい。自ら遠慮することなく指導医にたずねて下さい。コミュニケーションが不十分ではお互い期待している成果は上げられません。これはチーム医療の場では特に重要です。他科のドクター、看護師、技師、理学療法士、薬剤師等、他職種の人たちと円滑な意思疎通なしでは支援の仕方がうまくいかないため、効率的で有用な医療は困難です。みなさんのコミュニケーション能力も研修を通じて向上させて下さい。このような努力を惜しまなければ、2年後には多岐にわたる疾患を、いろいろな医療従事者と協力しながら適切に解決することができる、有能な医師に成長できると確信しております。新しい専門医制度の中では、専攻医として基幹病院以外でも後期研修をすることになります。勤務先では多職種の人たちがみなさんの働きぶりを評価し、それが研修修了の判定に関わってきます。次のステップを順調にこなしていくためにも、最初の2年間を実りあるものになるように過ごして頂きたいと切に願っております。
病院長 村木正人